退去精算
退去精算に対する当社の考え方・方針〜トラブルを回避する為に〜
年に何度か食事会を開催したり、入居者が大家宅に用があって立ち寄った際には、おかずをおすそ分けしたり、そのまま大家宅で一緒に食事をすることもあります。(バイトの給料日前など、夕飯を食べに遊びに来る学生さんもいます(笑))
単なる大家と入居者という関係ではなく、自分の子供と同様に接しています。卒業の際は淋しいですが、お祝いの気持ちを込めて卒業パーティーを開催し記念品をプレゼントしています。
この様に入居期間中に築いた良い関係を、退去される際にトラブルになって、お互い後味の悪い思いをして終わらせたくないと言うのが正直なところです。
そういったトラブルを避けるために予め当社の退去清算時の基準、考え方をこのHP上に記載しておきたいと思います。
原状回復については、現在の傾向として、「国交省の原状回復のガイドライン」に従って、退去時の原状回復義務を決定しています。
最近多く見受けられるのが、「自分の子はそんな事はしない」とおっしゃる親御さん、ガイドラインを良く理解なさっていない親御さんです。不動産会社の方(免許のない補助の方)でもガイドラインを理解されていない場合もあります。
当社では、新築のお部屋の場合を除き、入居引っ越し前(家具を運び込む前)に「入居時チェックリスト」に不具合のある箇所を記入していただき写真と共に提出して頂いています。傷等の写真に関しては家具搬入前にメールで送信していただく事としています。家具搬入時の傷が多いため、家具を運んだ後の提出は無効です。
このようにすることで、退去時に気が付いた傷や不具合が入居前からあったものなのかそうでないのか明確にすることができ、トラブル回避につながると考えております。ですから、この入居時チェックリストが退去清算時に大きく考慮されることとなり、入居後につけた傷、カビ、サビの補修費用のみが精算対象となります。(この他、特約に記載の通常クリーニングは借主の負担となります)
基本的には当社手配にて補修工事を行いますが、ご自分で修繕して出られる場合は退去日一カ月前までには当社にご連絡頂き協議の上、修復方法などを取り決め退去日までに補修修復クリーニングを完了していただくようお願い致します。万が一退去日までに完了しなかった場合には完了までの家賃相当額を頂く事になります。
その場合は、敷金返還100%の場合もございます。
過去に、「許可した覚えがないのに勝手に工事して」とおっしゃった親御さんがいらっしゃいましたが、次の入居者が決まっている場合は、入居時までに修復工事を完了させなければならないため、工事は迅速に行わなくてはなりません。退去日以降の工事になりますので退去者にお伺いを立てることなく当社に修復する権利はありますのでご理解下さい。
賃借人の原状回復義務と敷金返還問題について
賃借人は、賃貸人に対して、善良な管理者の注意を持って目的物を保管する義務(善管注意義務。民法400条)を負っており、これに違反し、賃借人の故意過失によって賃借物を毀損すれば債務不履行(民法415条)となり、賃借人は毀損部分の損害を賠償しなければなりません。
また賃貸借契約終了時には、賃借人は、賃借物を原状に回復して賃貸人返還する義務を負っています。
これを原状回復義務といい、「原状に回復する」とは、賃借人が設置したものを取り除く
「収去義務」のことと『国土交通省でいうガイドラインで基く原状回復』をいいます。
これらの義務を負う一方で、賃借人には敷金の返還を請求する権利を持ちます。
しかしこの敷金は、賃貸借契約が終了し賃借物を明け渡すまでに生じた賃借人に対する賃貸人の一切の債権を担保する役割を果たすため、敷金からこれら債権を控除して余りがある場合に限り、賃借人は敷金の返還を求めることができます。
原状回復の基本的な考え方と国土交通省ガイドラインの解説
国土交通省が公表している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(以下「ガイドライン」)では、原状回復を以下のように定義しています。
原状回復とは、賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反*、その他通常の使用を超えるような使用による損耗、毀損(以下「損耗等」といいます)を復旧すること。
なお、ガイドラインでは、建物の損耗等の復旧にかかる負担を分かりやすくするために、損耗等を以下の3種類に区分しています。
(1)建物・設備等の自然的な劣化・損耗等。時間が経つに連れて自然に劣化、損耗するもので、
一般には経年変化といわれます。
(2)借りた人の通常の使用によって生ずる損耗等。通常損耗といわれます。
(3)借りた人の故意・過失、善管注意義務違反*、その他通常の使用を超えるような使用による損耗等。
*善管注意義務:借り主は借りている部屋 を、相当の注意を払って使用、管理、保管しなければならないということです。そのため、例えば結露のように、発生すること自体は仕方ない現象でも、それを放置し て適切な手入れをしないがために、カビなどの被害を拡大させたという場合などは、善管注意義務に違反したとして、借り主の責任とされる可能性があります。
ガイドラインでは(3)の損耗のみを借り主が負担すべきとしています。例えば、次の入居者を確保する目的で行う設備の交換、化粧直しなどのリフォームについては、(1)(2)の経年変化及び通常使用による損耗等の修理ですから、貸主が負担すべきこととなります。
また、このほかに、震災等の不可抗力による損耗、上階の居住者など、借り主とは無関係な第三者がもたらした損耗等については、借り主が負担すべきではないとしています。
(2)の通常損耗の意味を詳しくガイドライン抜粋
賃借人の住まい方、使い方次第で発生したりしなかったりすると考えられるものは、「故意・過失、善管注意義務違反等による損耗等」を含むこともあり、もはや通常の使用により生ずる損耗とはいえない。したがって、賃借人には原状回復義務が発生し、賃借人が負担すべき費用の検討が必要になる。
当社で実際にあった事例1
・退去立会にて、床、壁に数か所傷を確認(入居時は新築物件であった)。入居者本人も自分がつけた傷だと認め、後日修繕費見積もり後、退去精算書を送付する旨を伝えた。
↓
・その後、退去精算書を見た親御さんから、精算書内容が納得できないとの連絡。
原状回復についてご説明したところ、下記のような内容のご返答を頂いた。
『退去費用について私どもの考えをあらためて書かせて頂きます。
お忙しいところ申し訳ありませんが、お考えをお知らせ願います。』
当社からの回答 (2017-07-12 ・ 348KB) |
との連絡のあった数日後、送金されてきました。
ご納得されたので送金されたのだとは思いますが、ガイドラインをしっかり理解されていればトラブルになることもなく、もう少し早く解決できたのだと思います。
当社で実際にあった事例2
(入居時は新築後未入居であった部屋)
※この事例は、話し合いがつかず訴訟にまで発展。
退去後、サッシの異常な破損が発覚。新築後、入居したのはその借主だけであるため、破損の責任は借主にあるものと考えられる。
破損状況も通常使用ではあり得ない様な破損状況であったため、原状回復の為の補修費用を請求したものの、自らの非を認めずいっこうに支払おうとせず、全く支払い意志がない。
↓以下、訴訟時に争点となった事柄
・退去時に立合いをした際、いくつか損傷部分が見つかったものの、その場では原状回復費用について明言せず、後日書面にて連絡する旨を伝えたが、被告はその場で「問題なし」と説明されたと主張している。「問題なし」とは一言も言っていない。
・その後、明らかに被告の故意過失による損傷と認められる部分の補修費用を含めた退去精算書を送付したところ、通常の使用方法に基づいて使用していたとの理由から支払いを拒否する旨の連絡を受けた。また、入居時にこちらの確認漏れでベランダの物が置いてある状態であった事を理由に、入居直前の清掃はされていないと一方的に推測し、退去時のハウスクリーニングに関しても支払いは不要と主張し始めた。
・決して不当な請求をしているのではなく、新築状態で更に入居直前に清掃スタッフがきちんと清掃してから賃貸させた部屋の破損部分に対しての請求であり、その破損部分は通常の使用方法ではありえない破損状態であるため、明らかに被告の故意過失があったと判断したため請求している。
【裁判所の判決】
1.被告(借主)は原告(貸主)に対し、xxxxxx円を支払え。
2.訴訟費用は被告の負担とする。
3.この判決は、仮に執行することができる。
取り調べた証拠により、請求原因事実を認めることができる。
※後日談
裁判所の判決が出た後も、なかなか送金してこなかった為、借主の父親の給料が差し押さえられる事となり、ようやく送金されてきた。
以上、今後二度とこのような経験はしたくないと思った事例でした。
退去清算でトラブルになり、裁判までしましたが結局借主がつけた損傷は借主が賠償しなくてはならないという簡単な答えです。
訴訟になればお互い時間や労力、費用を費やすことになります。ですから、訴訟になる前にお互いガイドラインをしっかり理解し、それぞれ負担すべきものを負担すれば、トラブルは避けられると考えます。